LA-HTRL1|「猪名川霊園」樹木葬という自然に還るお墓

・核家族の問題、墓じまい問題として樹木葬という選択
・自然に還るお墓は自然保護と墓地問題を解決する
・2023年のプリツカー賞を、デイビッド・チッパーフィールド氏が受賞

寒い季節も徐々に変わり始めてます。1年とはあっという間に過ぎ去り、年齢を重ねるが、人生100年時代といわれてますね。私にとってはまだ先のつもりですが、最近では20代、30代でも終活を考える方もいるそうです。先日、ランドスケープの仲間たちと学びの会で、兵庫県にある猪名川霊園に出かけました。我々の目的は、世界的に有名なデイビッド・チッパーフィールド氏の手掛けた建築とランドスケープを肌で感じるためでしたが、そこで出会ったのが樹木葬という「自然に還るお墓」でした。

猪名川霊園は兵庫県北摂山系の急斜面の位置し、今回、デイビッド・チッパーフィールド氏の手掛けたのは納骨堂と対極をなす地点の礼拝堂と利用者のための休憩室です。ここは宗教の枠を超えた人々が、集い、故人を偲び祈る場であるのです。周辺環境になじますために、屋根の勾配、外壁の素材、空間の配置、ボリュームが計算高く計画されています。中央にある中庭には67種の「山野草」が植えられ、季節を感じれるような空間になっています。一方、礼拝堂には、「樹々の庭」を配し、静かに故人と向き合う場所として設定されています。

日本の埋葬は土葬と火葬がありますが、火葬が一般的です。土葬は法的な禁止はないが地域が限定されます。火葬率でいうと日本は99.9%に対し、他国では50%を下回る国が多いです。様々な原因がありますが、日本の場合、国土が小さいという問題があげられます。
一方、日本の風景と言われる里山の森林では人手が足らず荒れ、田畑は放棄地になり、その利用法として太陽光パネルや産業廃棄物処理場などに変わる可能性がでています。環境の面から言えば、決して望ましいことではありません。

樹木葬とは火葬された故人の骨の粉末を埋葬することで、土に還り、植物に必要なリン酸カルシウムとしての栄養源になるのです。埋葬されるとそこに樹木を植え、数ヶ月で樹木に吸収され、故人は樹木に生まれ変わり、空気を浄化し、綺麗な水を生む、もっとも理にかなった自然のサイクルでもあるのです。お墓参りにはいつも、木々の溢れた空間で故人とゆっく向き合ってみませんか。

参考資料
「ファロス」2018年冬号 イギリス火葬協会発行
「衛生行政報告例」 厚生労働省発行 文化庁発行「宗教関連統計に関する資料集」
田中淳夫「樹木葬という選択」築地書館2016年

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